カルチャーの成熟に伴い、ファンの嗜好性を表す言葉も驚くほど豊かになりました。近年SNSを中心に定着したのが「光の腐女子」と「闇の腐女子」という対比概念です。
光の腐女子は、キャラクターたちの精神的成長や穏やかな日常、互いを尊重し合うハッピーエンドを愛好します。救いのある結末やピュアな心の交流を尊ぶスタイルです。対照的に、闇の腐女子は、悲劇、共依存、道徳的葛藤、あるいは破滅へと向かう重厚なドラマを好みます。痛切な感情のぶつかり合いや救いのないエンディングにこそ、魂の結びつきを見出す鑑賞態度です。
さらに近年、ネット用語として注目を集めるのが夜明けの腐女子です。これは、闇の腐女子が愛する救いのない過酷な絶望や葛藤の底をくぐり抜けた先に、わずかな光や再生の兆しを見出す作風を好む層を指します。徹底的な破壊の後に訪れる夜明けのような救済を味わう、極めて高度な感情体験を求める層といえます。
属性の広がりも顕著です。長年の活動歴を持つベテランファンを敬意を込めて呼ぶ貴腐人(きふじん)や、かつては珍しいとされた男性の愛好者である腐男子(ふだんし)の存在も当たり前の光景となりました。性別や年齢の枠組みを超え、個々の感性に応じた細やかなカテゴリーが成立しています。