山内惠介さんの卓越した歌唱力と表現力を語る上で絶対に外せないのが、昭和の歌姫・美空ひばりさんからの影響です。TVerで配信された特別番組の第45回「山内惠介『スポットライト』&美空ひばり『みだれ髪』への思い」でも、山内さんが自身の代名詞である『スポットライト』と並べて、美空ひばりさんの後期の名作『みだれ髪』(1987年発売・作詞:星野哲郎/作曲:船村徹)への並々ならぬ思いを語る姿が大きな反響を呼びました。
そもそも山内さんが演歌の道を志した原点は、母親のお腹の中にいた頃から聴かされていた美空ひばりさんの歌声にあります。1999年、高校1年生の時に出場した福岡県内のカラオケ大会で、作曲家・水森英夫氏の目に留まった際にも、山内さんは美空ひばりさんの楽曲を歌い上げてスカウトされています。
とりわけ『みだれ髪』は、美空ひばりさんが大病から不死鳥のごとく復活を遂げた際に発表された、魂の結晶ともいえる難曲です。当時の特番インタビューやコンサートのMCなどで、山内さんは『みだれ髪』について「ただ声を張り上げて悲しみを嘆くのではなく、絶望の淵に立たされた女性が、最後にふっと見せる微笑みや強さを表現しなければならない」という趣旨の考察をたびたび口にしています。
この「悲哀の奥にある気品と微笑み」という美学こそ、山内さんが『スポットライト』をはじめとする自身の楽曲に投影している表現技法そのものです。どれほど切ないマイナー調のメロディであっても、決して泥臭くなりすぎず、どこか洗練された「貴公子」としての品格が漂うのは、幼少期から美空ひばりさんの歌唱哲学を血肉化してきたからに他なりません。