では、実際にこれらの文字を手書きしようとした場合、どのような構造になっているのでしょうか。現場の書道動画や中国現地の伝承をもとに、代表的な2つの文字の解剖図を紐解きます。
1. 歌いながら覚える!57画「ビャン(𰻞)」のパーツ分解と書き順
ビャンビャン麺の「ビャン」は、一見すると黒い塊にしか見えませんが、分解すると全部で11個の馴染み深い漢字パーツから成り立っています。中国・陝西省の人々も、この漢字を丸暗記しているわけではなく、古くから伝わる「数え歌(歌訣)」を口ずさみながら書き順通りに組み立てています。
書き順の基本ルールは以下の通りです。
- ① うかんむり・あなかんむり(穴):まず最上部に「穴(あなかんむり)」を書きます(※点とワ冠で3画、ハで2画の計5画)。
- ② 中央上部の「言」:真ん中に「言(ごんべん)」を配置します(7画)。
- ③ 左右の「幺(いとがしら)」:「言」の両脇に、糸の上半分にあたる「幺」を1つずつ書きます(3画×2=6画)。
- ④ 中央の「馬」:「言」の真下に、麺のコシや力強さを象徴する「馬」を書きます(10画)。
- ⑤ 左右の「長」:「馬」の両脇に、長く伸びる麺を表す「長」を1つずつ配置します(8画×2=16画)。
- ⑥ 左端の「月」と右端の「刂(りっとう)」:全体の枠を締めるように、左外側に「月(にくづき・4画)」、右外側に「刂(りっとう・2画)」を添えます。
- ⑦ 下部の「心」:「馬」のすぐ下に「心(4画)」を入れて中心部を完成させます。
- ⑧ 最後の「辶(しんにょう)」:これまで書いたすべてのパーツを下から包み込むように、堂々たる「しんにょう(3画、旧字体では4画)」を引いてフィニッシュです。
現地の数え歌では、「一点が天に昇り、黄河が両岸に曲がる。八の字が大きく口を開け、言の字が中に入る。あなたもねじり(幺)、私もねじり(幺)、あなたも長(長)、私も長(長)、真ん中に馬の王様を挟んで、心という字が底に沈み、月が傍らに立ち、刀を引っ掛け、車に乗って咸陽(かんよう=秦の都)を巡る(しんにょう)」と詠われます。つまり、当時の庶民が麺作りの工程や屋台の情景を一つの文字に詰め込んだ「文字のテーマパーク」なのです。
2. 雲3つに龍3つ!84画の国字「たいと(𱁬)」の誕生秘話
一方、画数において「ビャン」を大きく引き離し、人類史上最多の84画を誇るのが日本生まれの国字「たいと(だいと・おとど)」です。構造は極めてシンプルで、12画の「雲」を3つ(計36画)と、16画の「龍」を3つ(計48画)組み合わせたものです。
雲を3つ重ねた36画の漢字「䯂(たい)」と、龍を3つ重ねた48画の漢字「龘(とう)」という既存の難解漢字を、さらに上下(あるいは左右)に合体させた文字であり、その圧倒的なスケール感から書道パフォーマンスやデザインの題材として根強い人気を誇ります。