下呂温泉から世界遺産の白川郷へ向かう場合、車や高速バスを乗り継いで片道約1時間半〜2時間以上の移動を要します。限られた1泊2日の温泉旅行において、移動に往復3〜4時間を費やすのはスケジュール上の大きな負担です。その点、温泉街の中心部からすぐ足を運べる下呂温泉合掌村の立地と展示密度は、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視する現代の旅行者にとって極めて合理的な選択肢となっています。
「レプリカやテーマパークのような作り物ではないか」と懸念する声も一部にありますが、村内に建ち並ぶ10棟の合掌造りは、すべて白川郷(大野郡白川村)や富山県五箇山から実際に移築された「本物の古民家」です。
国指定重要文化財「旧大戸家住宅」の圧倒的スケール
村内の中心エリアである「合掌の里」でひときわ存在感を放つのが、国指定重要文化財の旧大戸家住宅です。天保4年(1833年)から13年の歳月をかけて建造されたこの建物は、間口21メートル、奥行き12.3メートル、高さ13メートルという合掌造りとしても最大級の規模を誇ります。
釘を一本も使わず、ネソ(マンサクの若木)や縄だけで巨大な梁を組み上げた職人の技術は圧巻の一言です。白川郷の現地では、現在も住民が生活しているため内部非公開の建物が多く、また観光客の過密によってゆっくり見学できないケースが目立ちます。しかし下呂温泉合掌村では、1階から屋根裏(2階・3階)まで自由に上がることができ、当時の農具や養蚕の道具、黒光りする柱の質感を至近距離で観察できるのが最大の強みです。
「歳時記の森」と全長175mの森の滑り台・かえる神社
合掌の里の奥に広がる里山エリアが歳時記の森です。ここでは益田造りの古民家「旧岩崎家」(国登録有形文化財)のほか、春はしだれ桜、夏は新緑、秋はモミジと、飛騨の四季を映し出す散策路が整備されています。
このエリアで子どもから大人まで歓声を上げる名物アトラクションが、山の斜面を利用した全長175メートルの「森の滑り台」(ローラー滑り台)です。1回100円(3歳以上・お尻に敷くマット貸出込み)で、合掌造りの屋根が並ぶ集落を一望しながら風を切って滑り降りる爽快感は、他の文化財施設ではまず味わえません。さらに、下呂(ゲロ)の名称にちなんだ「かえる神社」や、散策で疲れた足を癒やせる「合掌の足湯」も併設されており、歴史探訪とレジャーが絶妙なバランスで融合しています。