物語のクライマックス、ウェンディとロストボーイズたちは現実のロンドンへと帰還し、ダーリング家の養子となって「大人になる」選択をします。一人ネバーランドへ戻ったピーターは、その後どうなったのでしょうか。原作の後日談『ピーターとウェンディ』のエピローグには、どんなホラー小説よりも胸を締め付ける結末が用意されています。
数年後、大人の女性になり母親となったウェンディの元へ、ピーターが再び訪れます。ピーターの姿は当時のまま変わっていません。しかし、彼はウェンディとの大冒険も、フック船長との死闘も、かつて命がけで自分を救ったティンカー・ベルの存在すら完全に忘れていました。
ピーターにとって過去は一切保持されず、すべては記憶の彼方へ消え去ります。ティンカー・ベルについて尋ねられたピーターは、「妖精はたくさんいるからね。彼女はおそらく死んだんだろう」とそっけなく答えるのみです。不老不死の代償とは、成長できないことだけではなく、「愛した者たちとの記憶を積み重ねられないという完全な忘却」だったのです。