甲子園出場を争う激戦区では、マネージャー陣が数カ月前から企画・デザインを練り上げたお守りが毎年話題になります。実力校で見られる意匠はもはや工芸品の領域に達しており、部員の心を揺さぶる精巧なギミックが満載です。
たとえば埼玉の強豪・花咲徳栄や東東京の雄・関東第一などでは、本物の公式ユニフォームのストライプピッチや襟元のパイピング、校名ロゴの書体をミリ単位でフェルト上に再現したユニフォーム型お守りが伝統となっています。胸の校名には一文字ずつ丁寧な刺繍が施され、背中には部員一人ひとりの名前と公式戦の背番号が刻まれます。また、実践学園をはじめとする伝統校では、勝利を呼び込む必勝だるま型や、本物の硬式球と同じ108本の縫い目を赤糸で忠実に再現した野球ボール型マスコットが採用されるケースも珍しくありません。
特筆すべきは、外側の造形美だけではありません。多くのお守りには隠しポケットが設けられており、マネージャーからの直筆メッセージカードや、選手が初安打を放った記念ボールの革片、さらには地元の必勝祈願神社で授かったお守り本体が内蔵されています。「第1打席、思い切り振り抜いて」「ピンチの時は空を見上げて深呼吸」。選手たちは打席に入る直前、あるいはマウンドでピンチを背負った際、ユニフォーム越しにお守りを強く握り締め、自分は決して一人ではないという絶対的な自己肯定感を取り戻します。