桂銀淑さんのディスコグラフィを振り返る際、『すずめの涙』や『夢おんな』『酔いどれて』といった代表曲と並び、根強いファンから絶大な支持を得ているのが『どうする貴方』です。この楽曲が時代を超えて愛され続ける最大の理由は、従来の「演歌」という枠組みにとどまらない、都会的でシャンソンやジャズのエッセンスすら感じさせる演歌・歌謡曲としての完成度の高さにあります。
まずは、桂銀淑さんが日本で築き上げた黄金期の軌跡と、この楽曲が位置する音楽的背景を客観的なデータで整理してみましょう。
| 年次・時期 | 主な楽曲・出来事 | 音楽史における意義・記録 |
|---|---|---|
| 1985年 | 『大阪暮色』で日本デビュー | 作曲家・浜圭介氏に師事し、独特のハスキーボイスが話題に |
| 1987年〜1988年 | 『すずめの涙』『夢おんな』大ヒット | NHK紅白歌合戦に初出場、日本レコード大賞金賞などを受賞 |
| 1990年代前半 | 『悲しみの訪問者』『どうする貴方』など発表 | 大人の女性の色気と葛藤を描く「ムード歌謡・ブルース路線」を確立 |
| 1988年〜1994年 | 紅白歌合戦に7年連続出場 | 韓国出身歌手として当時の最多連続出場記録を樹立 |
ヒット曲の裏側を語る上で欠かせないのが、作詞・作曲者との濃密なクリエイティブの関係です。桂銀淑さんを日本へ招き入れ、自宅に住まわせて発音から歌唱法まで徹底的に指導したのは、昭和歌謡界の巨匠・浜圭介氏でした。
当時の音楽番組や特番インタビューで語られた証言によると、桂銀淑さんは来日当初、日本語の意味を完全に理解できないまま、歌詞の一文字一文字に韓国語で感情のメモを書き込んでレコーディングに臨んでいたといいます。『どうする貴方』で見せる、突き放すようでいて相手にすがりつくような絶妙なボーカル表現は、まさに言葉の壁を超えた「魂の擦り合わせ」から生まれた産物でした。