物語序盤から中盤にかけて、読者に強烈な衝撃を与えたのが科学王国と武力帝国の衝突による「疑似死」の連続です。その描写は極めて生々しく、作中の緊張感を一気に跳ね上げました。
最初の極限状態は、石神千空が獅子王司に首を折られたシーンです。科学の発展を阻止しようとする司は、千空の卓越した知能を脅威と見なし、躊躇なく頸椎を強打しました。鈍い音とともに千空の心肺は停止し、大樹と杠は絶望の淵に突き落とされます。しかし、千空は自身の首裏にわずかに残っていた「石化の欠片」を意図的に温存していました。石化復活の瞬間に生じる細胞再結合現象を利用し、砕かれた頸椎を内側から繋ぎ直すという、己の命を賭けた極限の論理的賭けに勝利したのです。
さらに読者の胸を締め付けたのが、司帝国との決戦直後に起きた獅子王司の致命傷です。裏切りを画策した氷月の鋭利な管槍が司の胸郭を貫通。肺を破壊された司の敗血症や多臓器不全による死は、当時の原始的な医療技術では100%不可避でした。千空が下した決断は「司を殺さずに保管する」こと。フロンガスを利用した手作りの冷凍庫によるコールドスリープでした。「必ず石化装置を奪い取って叩き起こす」という千空の誓いと、静かに眠りにつく司の姿は、作中屈指の熱いドラマとして語り継がれています。
そして後半の南米決戦では、氷月がかつての宿敵である司とともにスタンリー部隊の凶弾に倒れる壮絶な戦いが描かれました。己の信条を全うし、千空たちの時間稼ぎのために盾となって心停止を迎えた氷月の描写は、完全な死亡フラグの成立を想起させました。しかし、この絶望さえも計算に入れた全地球石化の発動により、彼の肉体は分子レベルで保存されることになります。