公開から40年以上が経過した現在でも、SNSや映画レビューサイト、知恵袋などでは『蒲田行進曲』に対する熱烈な感想が絶えません。実際に視聴した世代や、近年のBS放送で初めて触れた若い世代の声を検証すると、当時の撮影現場の凄まじい熱量が浮かび上がってきます。
SNS上で特に多く見られるのが、「松坂慶子さんのウエディングドレス姿が神々しいほど美しい」「ヤスが階段から落ちる前の、小夏が撮影所に駆け込んで平手打ちをするシーンで毎回号泣する」といった、感情の爆発に対する共感の声です。
当時の特番インタビューや関係者の証言によると、深作欣二監督の演出は徹底したリアリズムを追求するものでした。クライマックスの階段落ちのシーンでは、高さ約7メートル、全33段におよぶ巨大な階段セットが組まれました。小夏がヤスの頬を張る場面では、深作監督から「本気で叩け」と指示が飛び、松坂さんが文字通り全身全霊で平田さんの頬を張り倒したことで、カメラの向こう側にいる視聴者の胸をえぐる本物の迫力が生まれました。また、ラストシーンでスタッフやキャスト全員がラインダンスを踊りながら主題歌『蒲田行進曲』(原曲:『放浪者の歌』)を合唱するメタフィクション的な演出は、映画という虚構の世界に生きる人々の哀愁と讃歌を見事に昇華させています。