旧函館区公会堂の内部に入ると、まず目を奪われるのが2階に位置する大広間です。延べ約130坪(約400平方メートル)に及ぶこの空間は、内部に1本の柱も立てないトラス構造で作られており、明治期における木造建築技術の粋を集めたもの。頭上を見上げれば、豪華なシャンデリアと繊細に復元された天井画が広がります。劇中で描かれた重厚かつクラシカルな空間の空気感は、一切の誇張なく実物そのままであることが現地に立つと実感できます。
そして最大の見どころが、大広間から外へ出られる2階バルコニーです。ここからは基坂(もといざか)越しに真っ直ぐ函館港を見渡すことができ、かつて海からの玄関口として栄えた函館のパノラマが一望できます。風が通り抜けるバルコニーで海を眺めていると、劇中の緊迫したシーンや登場人物たちが交わした会話の残響が聞こえてくるような没入感を味わえます。手すりのレリーフや唐草模様の細工など、意匠の細部にまで宿る職人技も見逃せません。