日本の英語学習において長年見落とされがちだったのが、「文字通りの意味」と「実際の会話での心理的距離感」のギャップです。従来の講義型授業では、「What is the matter with you? = あなたはどうしたのですか?」という構文解釈が中心で、それが相手にどう響くかというトーンの指導が十分ではありませんでした。
事実、ネイティブスピーカーの感覚では、「What is the matter with you?」を強めのイントネーションで発音すると、「お前、頭がおかしいんじゃないか?」「何様のつもりだ?」という強い苛立ちの表現になってしまいます。親切心から発した一言が、イントネーションひとつで重大な口論を引き起こすリスクを孕んでいるのです。
また、「How are you?」に対して決まり文句の「I'm fine, thank you.」と答える教育が長らく続いた結果、相手から「What's up?」と声をかけられた際に「I'm fine」と返して会話が途切れてしまうというミスマッチも頻発しています。「What's up?」は「最近何してる?」という近況の確認に近いため、「Not much.」(別にいつも通りだよ)や「Just working.」(仕事中だよ)と返すのが自然なキャッチボールです。