『トムとジェリー』を語る上で、インターネット上で定期的に拡散される有名な都市伝説があります。「実はトムとジェリーには悲しい最終回が存在する」という噂です。
ネット上で流布されているあらすじは、「年老いたトムが死期を悟り、ジェリーの前から姿を消す。残されたジェリーは新しいネコに挑むが、あっけなく噛み殺されてしまい、トムがわざと捕まってくれていた優しさに気づいて天国で再会する」という、極めてドラマチックで悲哀に満ちたストーリーです。知恵袋やSNSなどで感動話として幾度となく引用されてきました。
【プロの結論】都市伝説は完全な二次創作デマ!公式の見解
メディアリテラシーの観点から断言しますが、この最終回エピソードは公式のアニメーションとして制作された事実は一切存在しません。完全なファンの二次創作(ネット発の創作テキスト)が、長い年月をかけて都市伝説化したものです。
ワーナー・ブラザース公式およびウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラの手掛けた本来のシリーズ方針において、トムとジェリーの世界に「取り返しのつかない絶対的な死」という概念は持ち込まれません。どんなにフライパンで顔が平らになろうと、ダイナマイトで吹き飛ばされようと、次のカットではケロッとした顔で元通りになって追いかけっこを再開する――これこそがスラップスティック・コメディの真骨頂であり、彼らが世界中の子供たちに与え続けている「終わらない安心感」の本質です。
ただし、1956年に劇場公開された短編『悲しい悲しい物語(Blue Cat Blues)』という作品では、失恋によって絶望したトムとジェリーが踏切の線路に腰を下ろし、列車の汽笛が響くカットで暗転して終わるという、シリーズ中屈指の鬱エピソードが存在します。この異色作のダークな後味が、後年の「悲劇的な最終回」という都市伝説を補強する材料になってしまったと分析されています。