駆け引きによる偏食を疑う前に、物理的に「食べたくても食べられない」身体的要因が潜んでいないかを慎重に排除しなければなりません。その筆頭が口腔内トラブルと歯周病です。
国内の獣医学的知見において、3歳以上の成犬の約8割が歯周病またはその予備軍であると指摘されています。歯肉炎が悪化して歯根部に膿が溜まる根尖周囲膿瘍(こんせんしゅういのうよう)に発展すると、硬いドライフードを噛み砕く際に激痛が走ります。その結果、食事に近づいて匂いを嗅ぐものの、一口かじった瞬間に食べるのをやめてしまうといった仕草が見られます。
以下の兆候が1つでも認められる場合は、しつけの問題ではなく医療的処置が必要です。
- 片側の歯だけでぎこちなく咀嚼している、または食べ物を口からポロポロこぼす
- よだれの量が以前より明らかに増え、血が混じっている
- 顔の周り、特にマズルや目の下を触られるのを極端に嫌がる・威嚇する
- 鼻を近づけなくても分かるほどの強烈な口臭が漂う
さらに、腎不全や肝機能不全などの慢性疾患による軽度の悪心(気持ち悪さ)も、食欲低下の典型的な初期症状です。血液検査や尿検査を行わなければ外見からは判別できないため、「年齢のせいだろう」と放置することは極めて危険です。特に7歳以上のシニア期に入っている場合は、半年に1回の定期健康診断を兼ねて受診することをおすすめします。