無一郎の精神的・肉体的な転換点となったのが「刀鍛冶の里編」です。当初の無一郎は「合理的であること」を最優先し、弱者を冷たく切り捨てるかのような言動が目立っていました。これは、かつて双子の兄である時透有一郎(ときとう ゆういちろう)を鬼に殺害された凄惨な体験によって心を閉ざし、記憶喪失に陥っていたためでした。
しかし、竈門炭治郎が発した「人のためにすることは巡り巡って自分のためになる」という言葉が、心の奥深くに眠っていた父の言葉と重なり、無一郎の失われた感情の鍵を開けます。襲撃された刀鍛冶の少年・小鉄を身を挺して救ったことを皮切りに、無一郎は本来の情に厚い自分を取り戻していきます。
上弦の伍・玉壺の血鬼術「水獄鉢」に閉じ込められ、絶体絶命の窒息状態に陥った際、小鉄が命がけで吹き込んだ空気によって脱出に成功。その瞬間、兄・有一郎の最期の祈りと本音――「無一郎の無は、“無限”の無なんだ」という真実を完全に思い出し、無一郎の頬には雲のような「痣」が発現しました。
痣が発現したことで身体能力は飛躍的に上昇。玉壺が誇る真の姿に対しても、無一郎自身が編み出したオリジナル技「霞の呼吸 漆ノ型・朧(おぼろ)」を繰り出し、上弦の鬼をたった一人で完膚なきまでに斬首するという、鬼殺隊にとって百余年ぶりとなる歴史的快挙を成し遂げました。