もりやの歩みは、決して平坦なものではなかった。店主は本場・博多長浜の伝統的な仕込みと技法を愚直に受け継ぎ、埼玉県の八潮に最初の拠点を構えた。当時からその突出したスープのクオリティはマニアの間で瞬く間に話題となり、連日行列の絶えない大人気店へと成長する。しかし、テナント事情や諸般の環境変化により、惜しまれつつも一度その暖簾を下ろす決断を迫られた。
その後、東京都墨田区の本所吾妻橋へと場所を移して待望の復活を果たした。下町の地でもその実力は健在で、多くのファンが歓喜したものの、体調面や営業環境の課題が重なり、再び休業と移転の道を選ぶことになる。グルメカルチャー誌「メシ通」などの取材でも明かされている通り、ファンの間では「もうあの味を口にすることはできないのか」と深い喪失感が広がっていた。
沈黙を破ったのは2018年。千葉県松戸市の八柱エリアに、看板の文字を新たに「再々スタート」を切った店主の姿があった。立地や厨房設備を一から見直し、自身の理想とする炊き出し環境を妥協なく再構築。幾多の困難を乗り越えて辿り着いたこの地で、店主の情熱はより純度の高い職人魂へと昇華していった。