スマートフォンの位置情報に基づいたマップ検索は、極めて利便性が高い。しかし、「halal」という単語が店舗紹介文や口コミに1文字でも含まれていれば、アルゴリズムは機械的にその店舗をリストアップする。ここに第1の落とし穴がある。
現場で多発しているのは、海外からの観光客が「豚肉が入っていない(ポークフリー)」という口コミだけを頼りに来店し、醤油に含まれる微量アルコールや、みりんを使ったタレの存在を知って退店を余儀なくされるケースだ。日本料理の基本調味料である酒やみりんは、微量であってもイスラム法(シャリーア)においては禁忌(ハラーム)の対象となり得る。検索アルゴリズムは、こうした調味料の製造工程や、肉の屠畜方法が正規の手続き(ザビハ)を踏んでいるかまでは判別しない。
さらに、厨房内の「交差汚染」という不可視の問題がある。豚肉料理を提供する一般の居酒屋が、インバウンド対応として単に「豚肉抜きの鶏肉メニュー」を提供している場合、同じ包丁、まな板、揚げ油が共用されている可能性が極めて高い。信仰心の厚いムスリムにとって、これは明確な違反となる。デジタル検索が示す「近さ」は、必ずしも宗教的「安全性」と等価ではない。