「最低だ、俺って」という短いセリフには、碇シンジ自身の自己嫌悪だけでなく、庵野秀明監督から観客に向けられた強烈な批評性が内包されています。
シンジがこの場面で行ったのは、反応を返さない無防備な他者を一方的に消費し、自己の欲望と慰めを満たす行為でした。これは、アニメーションのヒロインに対して一方的に理想を投影し、都合のよい快楽や癒やしをむさぼるアニメファン・オタク層の心理構造と残酷なまでに酷似しています。シンジの呟きは、画面のこちら側でキャラクターを一方的に消費している観客自身へ突き刺さるブーメランでもありました。「お前たちが見ている主人公の真の姿はこれであり、お前たち自身の姿ではないのか」という告発が、この短い独白には込められています。