いくよ・くるよのド派手衣装には、舞台裏の過酷な現実を生き抜くための切実な知恵が詰まっていました。若手時代、男性中心の演芸界において女性コンビが客席の注目を集めるのは並大抵のことではありませんでした。マイクの前に立った瞬間、客席がざわついていても、一目で「何か面白いことが始まる」と分からせる必要があったのです。
いくよ師匠は、つけまつげを何重にも重ね、目の周りを濃いアイラインで囲む独特の「厚化粧」をトレードマークにしました。一方のくるよ師匠は、アメリカンフットボール選手並みの巨大な肩パットを特注し、ウエストには巨大なリボンを配したドレスを仕立てました。これらの衣装は既製品では存在しないため、大阪の個人仕立て屋に特注し、1着あたり数十万円を投じることも珍しくありませんでした。
舞台袖でのエピソードとして有名なのは、くるよ師匠が衣装の肩パットを触りながら「これが入ってへんと、舞台に出る気合が入らへんねん」と語っていたという証言です。衣装は単なる服ではなく、男性芸人たちと互角に渡り合い、何千人もの観客を笑顔にするための「甲冑(かっちゅう)」だったのです。