「様」を美しく書くうえで、最も誤読・誤認が多い部位が第10画から第14画を形成する脚部「氺(したみず)」です。活字フォントの形状を漠然と捉えていると、この部分を独立した漢字の「水」と同じものだと錯覚しがちです。
通常の「水」の筆順は、第1画が中央の縦ハネ、第2画が左側の「フ」の形状(横折れ)、第3画が左下の払い、第4画が右上の払いとなります。しかし、部首の一種である「氺」は構造が根本から異なります。「フ」のような連結した折れ画は存在せず、4つの独立した点・短い払いで中央の軸を挟み込む構造になっています。
文部省が定めた『筆順指導の手びき』に準拠した正式な運筆順は次のプロセスを辿ります。
第10画(中央縦棒): 上部の中央から真っ直ぐに縦棒を下ろし、末尾を左上へしっかりと撥ね上げます。この画が文字全体の重心を支える背骨となります。
第11画・第12画(左サイド): 縦棒の左側に位置する2つの点を上から順に打ちます。11画目は短い点、12画目はやや角度をつけて左下から右上の縦棒へ向かうようなハネ(あるいは短い点)として配します。
第13画・第14画(右サイド): 最後に右側の空間を埋めます。13画目は右上の点、そして最終となる第14画は右下への伸びやかな払い(または重みを持たせた留めの点)として筆を離します。
すなわち、「縦を引いてから、左の2画、その後に右の2画」という流れが絶対的な鉄則です。左側を一筆書きのように折れて書いてしまうと、楷書特有の引き締まった空間美が失われ、文字の重心が左下へ崩れる原因となります。