今回解禁された最新予告映像で最もファンの度肝を抜いたのは、大森元貴の放つ声の質感だ。Mrs. GREEN APPLEにおける大森のシグネチャーといえば、4オクターブに迫る驚異的な音域と、聴き手の鼓膜を突き抜けるようなクリアなハイトーンである。しかし、劇中でマイクを握る彼の口から発せられたのは、艶やかで湿り気を帯びた重厚なバリトンボイスだった。
水原弘の代表曲「黒い花びら」(作詞・永六輔、作曲・中村八大)は、甘い低音と頽廃的な男の色気が絡み合う、昭和歌謡史屈指の難曲として知られる。大森はこの難役に挑むにあたり、喉の響きを胸腔へと落とし込み、母音の処理やビブラートの揺れ幅を1950年代後期の歌唱様式へ徹底的にチューニングした。予告映像に映し出されたわずかなワンフレーズだけで、単なるモノマネを超えたボーカリストとしての凄まじい適応能力が証明されている。