幌見峠が今日のような名所となった背景には、行政主導の開発ではなく、農園「夢工房さとう」を立ち上げた創業者・佐藤氏の並々ならぬ熱意があります。1987年、わずか数百株の苗から始まった土壌開墾は、寒冷な札幌の山肌に適した品種改良と手作業による手入れを積み重ね、現在では約8,000株が咲き誇る規模へと結実しました。
この場所が世界中の写真家や観光客を惹きつける理由は、その類まれなジオグラフィにあります。一般的にラベンダー畑といえば富良野や美瑛のように広大な田園丘陵に広がるものが想起されます。ところが幌見峠は、中央区盤渓という札幌の都市圏に隣接する山麓にありながら、標高320メートルの高低差によって「紫の花畑越しに大通公園のテレビ塔やJRタワーを見下ろす」という特異なパノラマビューを成立させているのです。
晴天時には遠く石狩湾まで見渡せる抜け感があり、気象条件によっては夕暮れのトワイライトタイムに街の明かりが点灯し始め、幻想的な「花と光の二重奏」が姿を現します。都市景観と農業景観がこれほど高密度に圧縮されたロケーションは、国内でも他に類を見ません。