すべての発端となったのは、クラシック音楽の巨匠J.S.バッハが作曲した『小フーガ ト短調 BWV 578』です。誰もが音楽の教科書や学校のチャイムなどで一度は聴いたことのあるこの厳粛なフーガ主題に、まったく脈絡のない頭髪ネタを乗せた替え歌が誕生したのは、2000年代後半の日本のCGM(消費者生成メディア)黎明期でした。
当時、ニコニコ動画やテキストサイト、Flash黄金期の文化を引き継いだコミュニティでは、高尚なクラシック音楽や有名アニメソングに下世話な歌詞を乗せる替え歌パロディが一大ジャンルを形成していました。その中でも『小フーガハゲ短調』は、冒頭の主題メロディの音数と日本語のモーラ(音拍)が見事に一致していたことから、突出した中毒性を発揮します。高度な音楽理論に裏打ちされた構築美と、あまりにもくだらない言葉遊びのギャップが、初期ネットユーザーの心を掴みました。