大鍋で豪快に煮る芋煮であれ、家庭の小鍋で照りよく仕上げる「里芋の煮っころがし」であれ、里芋料理の成否を分けるのは調理科学に基づいた丁寧な下ごしらえです。里芋は水分が多くペクチン質の粘液を含むため、そのまま煮汁に投入すると表面だけが溶けて煮崩れ、中は味が乗らないという失敗に陥りがちです。
第一の鉄則は「六方むきと丁寧な面取り」です。上下を切り落とし、縦に皮をむいた後、角を薄く削る面取りを行うことで、鍋の中で芋同士が衝突しても角が崩れず、煮汁が濁るのを防ぎます。第二に「塩もみと下茹でによるぬめり取り」が不可欠です。粗塩を揉み込んで余分な粘りを出してから水洗いし、水から沸騰させて2, 3分ほど下茹でしてザルに上げます。この工程により表面の余計なタンパク質と泡立ちの原因が除去され、調味料がスムーズに浸透する土台が完成します。
そして家庭で煮っころがしを作る際の「味染み黄金比」は、出汁 4 : 醤油 1 : みりん 1 : 酒 1 (お好みで砂糖 0.5)のバランスが理想とされます。まずは出汁・酒・砂糖だけで落とし蓋をして弱火で10分ほど煮て、里芋の繊維を柔らかく緩めます。その後に醤油とみりんを加え、煮汁を煮詰めながら鍋を揺すって里芋を「転がす」ことで、表面に美しい照りをまとわせます。火を止めた後、温度が下がる過程で浸透圧により芯まで味が引き込まれるため、一度冷ます時間が最高の調味料となります。