音楽活動と並行して、莉犬の表現の軸となっているのが声優としてのキャリアです。テレビアニメや劇場版アニメ作品でのレギュラー出演、オリジナル短編アニメ動画の自作自演など、多彩な声の演じ分けは業界内外で高い評価を得ています。
そして2026年、半生を振り返るエッセイ『生きづらいぼくたちへ』が刊行されたことは、莉犬にとって一つの集大成となりました。本作では、かつて夢を諦めかけた養成所時代の挫折、家族との断絶と修復、そして性同一性障害を抱えながら生きる日常の細部が淡々と、かつ力強く描かれています。
「あの日のぼくも、今日のきみも、ひとりじゃないよ」――このフレーズに込められているのは、かつて自室で絶望していた自分自身への救済であり、今まさに同じ苦境にあるリスナーへのダイレクトな連帯の合図です。声優として他者の人生に声を吹き込む経験を重ねたからこそ、自分自身の「語られざる声」をも一冊の書物に結晶化させることができたのです。