旧前田家本邸洋館を訪れてまず圧倒されるのが、堂々たる外観の佇まいです。設計を手掛けたのは東京帝国大学教授の塚本靖と宮内省内匠寮の高橋貞太郎。イギリスの後期ゴシック様式を基調としたチューダー様式が採用され、急勾配の屋根や扁平尖頭アーチ、装飾的な煙突が美しいスカイラインを形成しています。
外壁を彩るのは、当時帝国ホテル(ライト館)の建築でも大流行したスクラッチタイルです。一本一本職人の手によって刻まれた縦方向の溝が、太陽の角度によって陰影を変え、季節や時間帯ごとに異なる表情を見せます。近代日本の武芸と欧州貴族文化を融合させた前田利為の美意識が、約100年の時を経た現在も建物全体から放たれています。
| 項目 | 詳細データ・仕様 | 見学時の注目ポイント |
|---|---|---|
| 建築面積・構造 | 鉄筋コンクリート造(一部木造)地上3階・地下1階建 | 昭和初期の最新耐火建築技術と伝統工芸の調和 |
| 竣工年 | 1929年(昭和4年)/翌年に和館が竣工 | 世界恐慌直前期に完成した華族建築の到達点 |
| 外装意匠 | スクラッチタイル貼り、銅板葺き屋根 | 手仕事の筋目が残るタイルの陰影と重厚感 |
| 文化財指定 | 国指定重要文化財(2013年指定) | 洋館・和館・門衛所・渡り廊下など敷地全体が対象 |