この息を呑む景観は、決して観光開発のために人工的に造成されたものではありません。その原点は、鎌倉時代末期から約700年以上にわたって受け継がれてきた伝統銘茶春日茶(かすがちゃ)の生産現場そのものです。
春日地区の茶畑は、日本国内でも数少ない「在来種」の茶樹が多く残る貴重な産地として知られています。現代の主流品種である「やぶきた」等とは異なり、種から育った在来種は根が深く張り、過酷な山肌の寒暖差に耐えながら、野趣あふれる滋味深い香りを生み出します。
全国的な知名度を得る転機となったのは、毎日新聞などの報道でも紹介された地元お茶農家による地道な草刈り活動でした。かつては雑木や下草が生い茂り、斜面全体を見渡すことは困難でしたが、農家や住民有志が「先祖から受け継いだ茶畑の美しい姿を取り戻したい」と伐採や遊歩道の整備を敢行。その結果、山肌を覆う緑の段々畑が白日の下にさらされ、訪れた登山者や写真家の口コミから「天空のマチュピチュ」として一躍脚光を浴びるに至りました。