なぜ埼玉県和光市がこれほどまでに元素を推し出しているのか。その核心には、理化学研究所の仁科加速器科学研究センターが成し遂げた歴史的偉業があります。
2004年から理研の森田浩介グループディレクター(現・九州大学名誉教授)を中心とする研究チームは、重イオン加速器を用いて30番の亜鉛(Zn)原子核を83番のビスマス(Bi)標的に衝突させる過酷な実験を繰り返しました。衝突回数は実に数百兆回。その中でわずか3回だけ原子核が融合し、極めて短寿命の原子番号113番の元素が生成されたことが確認されたのです。
ロシアや米国の合同研究チームとの激しい命名権争いを経て、2015年末にIUPACから公式に日本チームへ命名権が与えられました。そして2016年、日本固有の名を冠した「ニホニウム(元素記号:Nh)」が正式決定。欧米諸国以外で周期表に名を刻んだのは、アジア地域で史上初の快挙でした。和光市の通りに埋められた113番プレートは、日本の基礎科学が世界の頂点に立った証なのです。