大川栄策がメディア取材などで語ったところによると、『さざんかの宿』は単独のヒットにとどまらず、その後の楽曲展開における「情愛三部作」のプロローグでもありました。
『さざんかの宿』が不倫愛の苦悩と歓びを描いたのに対し、続くヒット曲『恋吹雪』では旅先での「行きずりの恋」という刹那的な逢瀬がテーマに選ばれました。そして三部作の終着点となった『冬花火』では、愛の極限状態としての「心中」という究極の破滅美が描かれています。吉岡治と市川昭介が描いたこの三作品は、大川栄策の円熟した歌唱力によって、昭和歌謡における禁断の恋愛抒情詩として完成の域に達しました。