桜の花びらを観察すると、散った1枚の形がまるで「細長いハート型」のように見えます。この先端が二つに割れた構造は、植物学では「凹頭(おうとう)」や「切込み」と呼ばれ、バラ科サクラ属のサクラ亜属に見られる代表的な特徴です。
花弁(花びら)は、植物の進化の過程で「葉」が特殊に変化して生まれた器官です。つぼみの時期、5枚の花びらは限られた小さなスペースの中で互いに重なり合い、外側の萼(がく)に守られながら成長します。この成長過程において、花びらの中心部分と外縁部の細胞分裂スピードに微細な差が生じることや、つぼみ内で折り畳まれる際の物理的圧力によって、先端の中央にくぼみが生じる設計になっています。
日本で親しまれている代表格「ソメイヨシノ」をはじめ、多くの野生種や園芸品種の桜にはこの明確な切れ込みが備わっています。イラストで桜を表現する際、単なるハートを描いてしまうと記号的になりすぎますが、この「先端の切れ込み」という花弁の構造を意識するだけで、一気に本物の桜らしい説得力が生まれます。