SNSや検索エンジンで「僕と乗っ取りヴィラン」という言葉を調べる読者の多くは、『僕のヒーローアカデミア』における悪の象徴、オール・フォー・ワン(以下、AFO)と死柄木弔(志村転弧)の主従関係および肉体支配の構図に注目しています(※一部では異世界転生・憑依系の別作品を連想するケースもありますが、少年漫画史における「乗っ取りヴィラン」の代名詞として本作のAFOが圧倒的な認知度を持っています)。
物語の序盤から中盤にかけて、AFOは死柄木弔に対して「次は君だ」と語りかけ、まるでオールマイトが緑谷出久を育てるかのように、惜しみない支援と教育を施してきました。読者の多くも当初は、AFOが純粋に「悪の意志を継ぐ後継者」を育成しているのだと受け止めていたはずです。
しかし、超常解放戦線との全面戦争編において、その残酷な真実が明かされます。AFOの目的は後継者の育成などではなく、オールマイトとの死闘で全盛期の力を失った自身の肉体を捨て、強靭に改造された死柄木弔の肉体を「自分自身の新しい器」として文字通り乗っ取ることだったのです。AFO自身が持つ「他者への憎悪」という感情の不足を、死柄木が抱える純粋かつ強烈な破壊衝動と憎悪によって補完し、これまで奪うことができなかった「ワン・フォー・オール(OFA)」を強奪するための冷徹な計算でした。