讃岐うどん作りにおいて、小麦粉と塩水を練り合わせた後の「足踏み」は、グルテンを網目状に発達させて強い弾力を生み出す不可欠なプロセスとされてきました。しかし、手織うどん 滝音の厨房では、体重をかけて生地を踏みつける光景は見られません。同店が採用するのは、職人が手作業で生地を何度も折り畳みながら延ばしていく「手織り」という独自の技法です。
足踏みによって強制的に強い圧力を加える製法では、噛みごたえのある硬いコシが生まれやすい反面、麺の密度が高くなりすぎてしなやかさが損なわれる側面もあります。一方で滝音の手織り製法は、生地の中に絶妙な空気の層を残しつつ、均一で繊細なグルテンの層を幾重にも形成します。これにより、表面は驚くほど滑らかで吸い付くような口当たりでありながら、中心部にかけてしなやかな弾力が広がる「多層的なコシ」が実現されています。硬さで圧倒するのではなく、伸びやかで心地よい弾力感を追求した結果が、この手織りうどんという唯一無二の着地点でした。