物語の中盤以降で明かされた巨人の正体は、他でもないエルディア人(ユミルの民)の成れの果てでした。マーレ当局によって「楽園送り」と称され、首筋に脊髄液を注射されたエルディア人が、光と共に巨人の姿へと強制的に変異させられていたのです。
では、なぜ同じ無垢の巨人でありながら、通常種と奇行種に分かれるのでしょうか。作中の描写や設定資料から導き出される理由は、主に以下の3点に集約されます。
まず1つ目は、生前の強い執着や無念の残滓です。前述した『イルゼの手帳』の巨人は、生前にマーレ国内でカルト教団の信徒として「ユミル」という偶像を崇めていた人物でした。巨人と化してもなお、ユミルに似た面影を持つイルゼを見たことで、生前の信仰心と捕食本能の間で激しい葛藤が生じたと考えられます。
2つ目は、家族や特定の人物に対する情動です。象徴的なのがラガコ村で変異させられたコニーの母です。彼女は体が不完全で立ち上がることができず、通常のように人間を襲うことはありませんでしたが、帰郷した息子のコニー・スプリンガーを見て「オ…カ…エ…リ…」と言葉を絞り出しました。親子の情愛が巨人の本能を辛うじて抑え込み、変則的な行動として表出した明確な証拠と言えます。
3つ目は、投与された脊髄液の調合や体質差です。マーレの軍事技術においては、巨人にどのような特性(大型化、運動性能など)を持たせるかに応じて脊髄液の投与方法がコントロールされていました。肉体の形成バランスが極端に崩れた個体や、神経伝達に変異が生じた個体が、奇妙なフォームで疾走する奇行種となった側面も指摘されています。