2020年10月16日、劇場版『鬼滅の刃 無限列車編』の封切りとともに、映画館を訪れた観客は前代未聞の衝撃に包まれました。事前の予告映像やプロモーションでは、下弦の壱・魘夢(えんむ)との対決のみが前面に押し出されており、猗窩座の登場そのものが一切伏せられていたためです。
下弦の鬼を打ち倒し、安堵の空気が流れた直後、地響きとともに突如として戦場へ飛来した上弦の参。その口から発せられた第一声を聞いた瞬間、映画館の空気が凍りついたと語るファンは少なくありません。「この透明感と不気味さが同居した声は石田彰さんではないか」という驚きと、これから始まる圧倒的な死闘への予感が瞬く間に広がり、SNSのトレンドは猗窩座と石田彰さんの名前で埋め尽くされました。
公式が徹底した情報統制を敷いた背景には、「原作を知らない観客にも、炎柱・煉獄杏寿郎たちが直面した唐突な理不尽と絶望をリアルタイムで体感させたい」という演出意図がありました。その狙いは見事に的中し、歴代興行収入1位という金字塔を打ち立てる大きな推進力となったのです。