日本の過酷な猛暑において、「少しでも涼しくしてあげたい」という親心からサマーカットとしてライオンカットを選ぶ飼い主は少なくありません。しかし、この判断には獣医学的に大きな誤解が存在します。
ダックスフンドの体高は地面からわずか十数センチしかありません。夏場のアスファルト舗装は日中、表面温度が50度から60度以上に達します。人間が立っている位置よりもはるかに強烈な地面からの照り返し(輻射熱)を、露出した腹部や胴体で直に浴びることになります。豊かな毛があれば熱を遮断できたはずの胴体に直射熱が直撃するため、熱中症リスクはむしろカット前より格段に跳ね上がります。
加えて警戒すべきは紫外線リスクです。犬の皮膚の角質層は人間の約3分の1程度の薄さしかありません。被毛のシールドを失った無防備な皮膚に紫外線(UV-A、UV-B)が照射されると、軽度の日焼け(サンバーン)から紅斑、水ぶくれを起こすだけでなく、長期的には皮膚の線維化や扁平上皮癌などの皮膚腫瘍を誘発する引き金にもなり得ます。「短く切る=熱中症対策」という図式は、ダブルコートの犬種においては完全に誤りであることを認識しておく必要があります。