2002年に公開された『猫の恩返し』は、『耳をすませば』のスピンオフ的な位置づけとして企画され、森田宏幸監督がメガホンを取り、宮崎駿が企画・プロデュースを担当しました。主人公の女子高生・吉岡ハルが、猫の国の王子・ルーンを助けたことから巻き込まれる不思議な冒険譚です。
映画のエンディングを飾る楽曲について、スタジオジブリ側には明確なビジョンがありました。壮大なオーケストラやドラマチックなバラードではなく、「等身大の女子高生が、奇妙な異世界から日常の現実世界へと戻っていく時の軽やかさ」を表現できる音楽が求められていたのです。当時すでにラジオやインディーズシーンで評価を得ていたつじあやのの楽曲を聴いたプロデューサー陣は、その飾らない日常感こそがハルの帰還にふさわしいと直感し、正式なオファーを出しました。
依頼を受けたつじあやのは、絵コンテや制作途中の資料を読み込み、映画のために書き下ろし楽曲を制作。アコースティックバージョンと、ホーンセクションやストリングスを加えた映画用のアレンジが練り上げられ、名曲「風になる」が完成しました。劇伴を担当した野見祐二による壮大なサウンドトラックのラストに、つじあやののウクレレが響くコントラストは、観客に深い爽快感と余韻を残しました。