久石譲が手がけるスタジオジブリ作品の楽曲は、単なる劇伴の枠を越え、現代クラシック音楽として世界的な評価を確立しています。とりわけ2025年に日本テレビ放送網主催で開催されたロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団との大規模フィルムコンサートツアーは、クラシック公演としては異例の13万人という動員数を記録しました。にもかかわらず、チケット難民が続出したのはなぜでしょうか。
第一の理由は、体験価値の圧倒的な希少性です。フルオーケストラの生演奏に合わせて名作アニメーションの全編あるいは抜粋映像を同期上映するフィルムコンサートは、莫大な制作費と綿密なリハーサルを必要とするため、頻繁な全国ツアーの開催が物理的に困難です。宮崎駿映画の情緒的なメロディを久石譲本人の指揮で体感できる機会は、ファンにとって生涯に一度あるかないかの特別なイベントとなっています。
第二の要因は、観客層のボーダーレス化です。日本国内のファミリー層や古くからのジブリファンに加え、近年は欧米やアジア圏からのインバウンド旅行者が鑑賞目的で来日するケースが急増しました。映画『君たちはどう生きるか』が米アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞したことも追い風となり、全世界の音楽ファンが日本のチケット販路に一斉に殺到する状況が生まれています。