べにや無何有の客室露天風呂の縁に腰掛け、竹林を吹き抜ける風の音を聞くとき、多くの人が日頃いかに不要なノイズに囲まれていたかに気付かされる。原研哉氏の端正なデザイン、竹山聖氏の建築、そして薬方トリートメントと加賀の美食。これらはすべて、訪れる者の心に「無何有」という名の余白を取り戻すために配置されている。
情報が過剰に溢れ、常に接続を強いられる時代だからこそ、意識的に「何もないことの豊かさ」へ身を投じる価値は高まっている。山代の豊かな自然に包まれ、五感を本来のリズムへと解き放つ時間は、旅が終わった後の日常を確かに軽やかなものへと変えてくれるはずだ。