理論の美しさを理解したら、次は楽器でその響きを体感してみるのが最短の理解法です。丸サ進行は、ギターやピアノで押さえるポジションによって劇的にその表情を変えます。
ギターコード:カッティングで出す「泥臭いグルーヴ」
ギターで『丸の内サディスティック』の雰囲気を再現する場合、ローコードで開放弦を鳴らすのではなく、5フレット〜8フレット付近のハイポジションを使ったバレーコードで押さえるのが鉄則です。
Key=Cの場合、基本のフォームは以下のようになります:
- FM7: 8フレット(5弦ルート)
- E7: 7フレット(5弦ルート)
- Am7: 5フレット(6弦ルート)
- C7: 3フレット(5弦ルート)※Gm7, C7のツー・ファイブに分割するのも有効
ポイントは、コードを鳴らした直後に左手の力をわずかに抜き、音を小気味よくミュートするブラッシングを挟むことです。このパーカッシブなアタック音が、椎名林檎の原曲が持つジャジーな疾走感を生み出します。
ピアノアレンジ:ルートを捨てて手に入れる「洗練の響き」
ピアノで丸サ進行を弾く際、初心者が陥りがちなのが「左手でルートを弾き、右手でベタ塗りのコードを弾く」アプローチです。これでは音が重くなり、洗練されたアーバンな空気が失われてしまいます。
プロの響きに近づける秘訣は、右手の「ルートレス・ヴォイシング」にあります。右手でベース音(ルート)を弾かず、3度、7度、そしてテンションコードである9th(ナインス)の音を積み重ねます。例えばFM7なら、右手で「ミ・ソ・ラ・ド」を押さえることでFM7(9)の豊かな響きが生まれます。左手で単音のウォーキングベースを刻み、右手は軽やかにシンコペーションを効かせる。それだけで、下北沢のライヴハウスから高級ホテルのラウンジへと景色が一変します。