2024年、ロンドン公演を含む大規模な国内外ツアーに向けてキャスト体制が拡張された際、新たにハク役に抜擢されたのが増子敦貴(GENIC)でした。ダンス&ボーカルグループで培ったリズム感と華やかなステージング力を持つ増子にとって、この大役はキャリア最大の挑戦となりました。
日経クロストレンド等の取材に対し、増子は当初、三浦や醍醐が作り上げた完成度の高いハク像にプレッシャーを感じ、自らの役作りに深く悩んだ胸中を明かしています。しかし稽古を重ねる中で、増子は「湯婆婆に支配されている時の虚無感」を徹底的に掘り下げました。自我を失いかけた操り人形のような無機質な佇まいから、千尋との再会によって徐々に失われた記憶と心が呼び覚まされていくプロセスの落差を、瞳の輝きの変化で繊細に表現したのです。
長身を活かしたダイナミックなアクションと、現代的なシャープさを兼ね備えた増子のハクは、観客層をさらに広げ、初演メンバーとはまた異なる「哀愁を帯びた美しさ」を確立しました。