東山紀之氏のSMILE-UP.社長退任が近づくにつれ、かつての主演作を懐かしむ声が高まるのは自然な成り行きです。しかし、役者としてのキャリアと経営者としてのけじめは、容易にトレードオフできるものではありません。渡辺小五郎という当たり役の復活を望むファンの願いと、引き受けた社会的責任の完遂との間で、本人は極めて慎重な姿勢を崩していません。
必殺シリーズが半世紀にわたり描き続けてきたのは、不条理な現実に苦しむ弱者の声と、自らの業を背負いながら刃を振るう裏稼業の悲哀でした。現実の世界で巨大な組織の責任者として補償問題に向き合ってきた東山氏の歩みそのものが、ある種の重いドラマを帯びています。看板時代劇の火を絶やさぬための制作陣の決断と、一人の表現者としての東山氏の今後の出処進退に、引き続き静かな注目が集まります。