思い出横丁の原点は、太平洋戦争直後の1946年(昭和21年)頃に形成された露店マーケットに遡ります。焼け野原となった新宿西口の一角に、木炭や日用品、そして進駐軍から流出した物資を売る露店が立ち並んだのが始まりでした。当時、統制経済下で厳しく制限されていた食材の中で、比較的入手しやすかった牛や豚の内臓(ホルモン)を串焼きにして提供する店が急増し、これが現在まで続くやきとりやもつ焼き文化の土台となりました。
かつては簡易なベニヤ板で仕切られた長屋構造で、共同トイレが整備されていなかったことから、線路沿いの側溝で用を足す客が後を絶たず、自然と「しょんべん横丁」という強烈な通称が定着しました。昭和中期には文壇の文豪や映画監督、近くのオフィス街で働くサラリーマンたちが夜な夜な集い、安酒を酌み交わす社交場へと発展していきます。
1999年(平成11年)11月に発生した大規模火災により、横丁の約3分の1にあたる28店舗が焼失する未曾有の危機に見舞われました。しかし、店主たちの強固な結束により、防火基準を満たしながらも当時の区画とレトロな佇まいを忠実に再建。「新宿西口思い出横丁」として公式に統一ブランドを掲げ、失われゆく昭和の情緒を現代に継承することに成功しました。