カナヲの精神的な自立がもっとも鮮明に描かれたのが、無限城における上弦の弐・童磨との死闘です。姉のように慕っていた胡蝶しのぶを目の前で吸収され、最愛の師を失ったカナヲは、かつて決して表に出すことのなかった激情を露わにします。
心を持たず、偽りの感情で人を食らう童磨に対し、カナヲは冷徹かつ的確な言葉の刃を突きつけました。「貴方、何のために生まれてきたの?」。感情を失っていた少女が、真の虚無を生きる鬼の欺瞞を看破し、痛烈に糾弾したこのシーンは、彼女が完全な人間性を取り戻した証左でした。
しのぶが自らの肉体を藤の花の毒で満たして喰わせ、伊之助が共闘する中、カナヲは視力を失う代償を伴う花の呼吸の終ノ型「彼岸朱眼(ひがんしゅがん)」を発動。自らの右目の光と引き換えに童磨の頸を切り落としました。戦いの後、姉妹の形見である髪飾りを胸に抱き締め、人目をはばからず号泣する彼女の姿は、感情を取り戻した一人の人間としての尊い勝利でした。