『TSUNAMI』の歴史を語る上で、2011年3月11日の東日本大震災以降の文脈を避けて通ることはできません。未曾有の大津波による甚大な被害を受け、サザンオールスターズ側およびメディアは、被災者の心情に寄り添う形で本楽曲のラジオ放送やライブでの演奏を一時期自粛しました。
この配慮は、アーティストとしての深い倫理観と社会的責任の表れでした。しかし、楽曲そのものが持つ「切ない恋心」と「生きることへの哀愁」という普遍的な祈りは、人々の心から消え去ることはありませんでした。長い歳月を経て心の傷が少しずつ癒やされる中で、「やはりこの名曲を聴きたい」「歌の力で前を向きたい」というリクエストが被災地を含めて自然発生的に高まっていった経緯があります。悲劇と向き合い、時間をかけて再び日常の宝物として迎え入れられた歴史こそが、本作が単なるヒット曲を超えて国民的遺産と呼ばれる理由です。