富山の郷土料理店で受け継がれてきた煮付けの真髄は、貝の身を縮ませず、ふっくらとした弾力を残したまま芯まで味を含ませる火加減にあります。巻き貝の筋肉は急激な強火や長時間の過熱に弱く、加熱しすぎると水分が抜けてゴムのような硬い食感に変わってしまいます。
地元で愛される基本の煮汁における黄金比率は、「酒 4 : 濃口醤油 2 : 本みりん 2 : 砂糖 1 : 水 4」です。貝500グラムに対して、酒100ml、水100ml、醤油50ml、みりん50ml、砂糖大さじ2程度を目安とし、薄切りにした生姜1かけを加えることで魚介特有の匂いを品良く整えます。
鍋に煮汁の材料を入れてひと煮立ちさせ、アルコール分を飛ばしてから、重ならないようにバイ貝を投入します。落とし蓋をして中火にかけ、再度沸騰したら即座に火を弱め、ふつふつと泡立つ程度の弱火で7分から8分だけ静かに煮込みます。時間が経過したら直ちに火を止め、鍋ごと冷ましていきます。貝類は冷めていく過程で浸透圧によって味が内部へと均一に染み渡るため、無理に煮詰めず、煮汁に浸したまま完全に粗熱を取ることが、柔らかさと濃厚な旨味を両立させる秘訣です。