辨財天を祀る寺社において、最も境内が混み合うのが十干十二支の組み合わせで巡る「巳の日(みのひ)」、とりわけ60日に一度しか訪れない己巳の日(つちのとみのひ)です。十干の「己(つちのと)」は五行思想において「土」の気を表し、金を生み出す源泉とされます。十二支の「巳」は辨財天の縁日であるため、土と金が重なる己巳の日は、財運を引き寄せる最大吉日として江戸期より特別視されてきました。
この特別な日に多くの参拝者が行うのが「銭洗い」です。ザルに硬貨や紙幣を入れ、境内の霊泉で清める行為は、鎌倉の宇賀福神社を発祥としつつも、都内の辨財天各所へ定着しました。銭洗いの本質は単にお金を増やすことではありません。世間を巡る中で付着した邪気や執着を水で洗い流し、「清らかな種銭」へと昇華させる精神的なリセットにあります。浄化したお金を財布の奥に御守として収めるか、あるいは社会を循環させるために有意義な事業や学びに使うことで、結果として大きな富が戻ると信じられています。