かつて日帰り観光地としての側面が強かった美濃市ですが、近年は歴史的建造物の内部空間を活かしたリノベーションが急速に進展し、滞在型デスティネーションへと進化を遂げました。その象徴的プロジェクトが「NIPPONIA 美濃商家町」です。2026年1月には皇室の地方視察先としても選ばれ、その地域再生モデルとしての完成度が全国的な注目を集めました。
NIPPONIAは、町全体を一つのホテルと見立てる「分散型ホテル」の思想に基づいています。築100年を超える紙問屋「松久才治郎邸」をはじめとする歴史的建造物を改修し、梁や柱、土壁の質感を損なうことなく、現代の快適性を兼ね備えたスイートルームへと仕立て上げました。チェックインを済ませた宿泊者は、鍵を手に通りを歩いて自室の「蔵」や「離れ」へと向かいます。夕刻には住人のように町をそぞろ歩き、地元食材をふんだんに使った割烹やビストロに立ち寄るなど、美濃の日常の営みに溶け込むような体験が設計されています。
また、通り沿いにはセンス溢れる古民家カフェや自家焙煎珈琲店、和紙雑貨のセレクトショップが点在しています。立派な梁が露出する吹き抜け空間で、美濃和紙のフィルターを使ってハンドドリップされた珈琲を味わう時間は格別です。伝統建築の外観を守りつつ、内部に現代的なクラフトマンシップを吹き込むことで、歴史的町並みは感度の高い若年層やインバウンド旅行者を引き寄せるフォトジェニックな空間として再定義されています。