龍恋の鐘が単なる観光モニュメントにとどまらず、屈指の恋愛成就パワースポットとして定着した背景には、鎌倉時代の史書『江嶋縁起』に記された「天女と五頭竜」の伝承が存在します。かつて深沢の湖に棲み、悪行を重ねていた五つの頭を持つ巨大な竜が、天から舞い降りた美しい弁天財(天女)に恋焦がれ、自らの悪業を悔い改めて善神となり、彼女と結ばれたという壮大な婚姻譚です。
1996年、藤沢市観光協会がこの伝説の舞台となった相模湾を見下ろす高台を「恋人の丘」と命名し、設置したのが「龍恋の鐘」でした。鐘を二人で打ち鳴らすことで永遠の愛が約束されると伝えられ、現在では訪れたカップルが愛の誓いを刻んだ「南京錠」をフェンスにロックする通過儀礼が定着しています。人工的なエンターテインメントに依存せず、千年以上受け継がれてきた土地の土着信仰とロマンスが結びついた特異な文化的文脈を持っています。