物語中盤、軍の手によって要塞に囚われたシータを救い出すため、パズーはかつて敵対していた空中海賊ドーラ一家と一時的な同盟を結びます。傷心のパズーに対してドーラが冷徹かつ包容力をもって突きつける条件、それが「40秒で支度しな!」という宣告でした。劇中でパズーは鳩の餌箱を整え、トランペットや最小限の携行品を素早く揃え、小型羽ばたき機「フラプター」の後部座席へと飛び乗ります。
映画演出としてこの40秒という尺は絶妙極まりないリアリズムを孕んでいます。「1分」では日常的な語感から緊迫感が削がれ、「10秒」や「30秒」ではアニメ的な誇張が勝ちすぎてしまう。軍の飛行戦艦ゴリアテが飛び立つまでの猶予、そして少年が人生を賭けた決断を下す物理的限界として設定された「40秒」という数値が、ドーラの冷酷な計算高さと同時に母親のような器の大きさを観客に強く刻み込みました。