帯結びの成否を分ける決定打は、帯を巻く前段階、すなわち「背中の補整」の精度にある。日本人女性の体幹は肩甲骨から腰椎にかけて緩やかなS字湾曲を描いているが、この湾曲の深部に隙間が存在すると、帯結び全体の荷重を受け止めるベースが成立しない。
帯結びの土台を強固にするためには、肩甲骨下端から帯の上線に該当する窪みを、脱脂綿や和装補整パッドを用いて完全にフラットな平面へと均す必要がある。背中の補整が不十分な状態でどれほど堅固に帯を結んでも、背中と帯の間に生じた数センチの空間へ帯結びの結び目が沈み込み、テコの原理によって羽根の外側が下を向く結果となる。
ここで重要な役割を果たすのが帯枕のあて方だ。変わり文庫結びのアレンジにおいては、通常のお太鼓結びで使われる標準的な帯枕よりも、厚みが薄く横幅の狭い専用の枕、あるいは小さめの背板・三重仮紐の根元クッションを精緻にフィットさせる技術が欠かせない。帯枕の底面を背中に隙間なく水平に押し当て、紐をみぞおちの上部で斜め下に向けて締め込むことで、帯結びの根元に強固な「受け棚」が完成する。この受け棚が確立されて初めて、羽根の根本を背中から60度以上の角度で持ち上げる推進力が生まれる。