アーケード内に足を踏み入れると、まず目を奪われるのが実物大のたこ焼き器や巨大な寸胴鍋、店舗用のサインボードだ。大阪の粉もん文化を支える鋳物の焼き台は、火加減の伝わり方や鉄板の厚みによって仕上がりが激変するため、店主たちは道具選びに妥協しない。道具屋筋には、そうした細かな仕様変更や特注オーダーに応じる専門店が揃っている。
一方で、近年急速に支持を広げたのが食品サンプルの専門店だ。職人が塩化ビニールや樹脂を使って丹念に作り上げる握り寿司やラーメンの模型は、飲食店の店頭ディスプレイ用としてはもちろん、アートピースや土産物としての需要が急増した。店頭で実施される製作体験ワークショップは、連日予約で埋まるほどの活況を見せている。
「見る・触れる・作る」という五感を通じたアプローチが、専門器具という敷居の高さを解消した。一般家庭のキッチンでもプロの仕上がりを再現できる本格的なフライパンやペティナイフを買い求める料理好きにとって、道具屋筋はまさに宝探しの空間として機能している。